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termination

It's variety that makes me whole

短編ゴミ小説「とけいたん!」

セルフ転載

明日英検だけど何も勉強してないし更新するぜ!!

前にフォレストページで書いた小説の転載(加筆修正あり)です
どうぞお読みください〜

 

 午前七時。
 いつものように腹の底から音を出す。
 毎回規則正しく、段々大きくしていった。
 それでも、彼は起きない。口を開けて寝ている。
 何回鳴らそうが彼は起きず、私は鳴らす事を断念した。毎日の事ではあるが、なぜ彼は何回鳴らそうが起きないのだろうか。
 少ししてから、彼の母親がやってきた。母親が起こせば、やっとこさ彼は起きる。なんで私では起きてくれないんだろう。
 彼が部屋を出ると、私の役目は終了。
 私がこの家に来て何年も経った。でも、私の音で起きてくれたのは数える程しかない。
 もっと熱心に音を出せば起きてくれるかな。それはなかった。
 どうせ私は同じ音しか出せない。
 隣の部屋から聞こえてくる音の中に「頑張れば思いは伝わる」と言う物があったが、それはない。私が何をしようが、口が無いので相手に私の気持ちなんか伝わるわけがない。
 もし人間だったら伝わるのかな。そう私は何回も思った。
 まあ彼が夜遅くまで起きてるのが一番の原因だろう。
 
 暫くして、彼は私を必要としなくなった。私よりも出来る方がこの家にやってきた。
「この目覚まし売る?」
 と彼の家族が言い出した時、プラスチックと鉄などでできている身体に寒気がした。
 私はフリーマーケットなるものに連れて行かれた。昔別の場所に置かれていた時は箱の中に入りビニールに覆われよく分からない紙と一緒に入っていたが、今は他の方と共に、何も被らず外にいる。
「それ下さい」
 と一人のお婆さんが言ってきた。お婆さんは彼の母親に円形の金属を渡すと、私を掴んでバッグの中に入れた。私には金属二つ分しか価値が無いらしい。
 
  それから、私はお婆さんの物になった。彼女には家族がいないようだった。
 音出しの時間は午前六時となった。
 お婆さんは必ず私の音で起きてくれた。いつも私の頭に手を置いて私の音を止め、布団から出ていった。
 私はお婆さんを好きになった。
 それから何年も、お婆さんは私の音で起きてくれた。頭に手を置かれる時、お婆さんの温もりを感じ、私は嬉しかった。
 
 お婆さんの力は日に日に弱くなっていってた。
 昨日から、お婆さんは寝たままになってしまった。ご飯も食べず、洗濯物も干したりしようともしない。
 お婆さんは手を震わせながら私の音を止めるけど、布団から出ることは無かった。
 
「今までありがとうね」
 いきなりお婆さんは私に話しかけた。
 次の日になった。お婆さんはずっと布団の中にいた。
 六時になり、私は音を出す。
 起きない。
 どんどん音を大きくしていった。それでもお婆さんは起きなかった。
 何年も前に私を使ってた彼のように、起きてくれなかった。
 音を鳴らすのをやめ、時間だけが流れていった。お婆さんは起きなかった。
 もし目があったら、私は涙を流していただろう。でも、目は無い。
 
 お婆さんが起きないと分かってても、私は音を出した。それが私の役目だから、起きないと分かってても起きてほしいから。
 日に日に出せる音が小さくなり、針もだんだん動かなくなった。
 この家にはもう、電池を変えてくれる人はいない。
 私は、生きてきた中で一番眠たく感じた。
 
 私と同じ形をした仲間を思い出す。みんな同じようにネジを閉められて生まれてきた。口は無いから話した事はなかった。
 ビニールを被せられて、箱に入れられて電気屋に連れていかれた。
 それから彼が私を買っていって、彼の家で何年も自分の仕事を果たした。起きてはくれなかったが、私が眠たくなってくると背中の電池を取り替えてくれた。
 フリーマーケットに出され、お婆さんに買われ、お婆さんの家で仕事を全うした。
 幸せなひと時だった。
 
 何やら家が騒がしい。お婆さんの家族が来たのだろうか。
 私が人間だったら、今は眠りに就く頃だろう。